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執筆者の写真北島コウ

通信サービス障害への備えは?

更新日:2023年4月4日

皆さん、こんにちは。


先週、3月28日(火)のニュースで、通信事業者より、サービスの障害時に副回線の利用によって代替手段を確保する仕組みが発表されましたので、今回はこの話題を取り上げたいと思います。


通信障害によってスマートフォンが使えなくなったことのイメージ写真

KDDIのニュースリリース


ソフトバンクのニュースリリース


2022年は通信の重大障害が多発した年だった

昨年7月にKDDI(au)において61時間、延べ3,000万人に影響を及ぼす大障害が発生したのを始め、8月には(これは固定通信サービスですが)NTT西日本で京都府など12府県において最大6時間、211万回線のインターネットサービスがつながりにくくなる障害、9月には楽天モバイルで約2時間、データ通信で約130万人に及ぶ障害というふうに、立て続けに発生しました。

7月のKDDIの障害で大きくクローズアップされたのは、スマートフォンと通信サービスが私たちの生活のあらゆる面に深く浸透しており、ひとたび障害が発生すると大変なダメージを受けるという点です。

例えばスマートフォンによるキャッシュレスの浸透により、現金をあまり持ち歩かなくなったため、通信ができないと買い物もできない。

スマートフォンの普及により公衆電話が激減したため、緊急事態が起こっても電話をかけられない、など。

また私たち一般人の生活のみならず、最近では業務用の様々な機器や監視・観測装置などもモバイルデータ通信で接続しているものも多く(いわゆるIoT)、それらも軒並み影響を受けることになりました。

おそらく10年前ならばここまでのダメージはなかったものが、2010年ごろ以降の高速モバイルデータ通信(LTE)とスマートフォンの登場、普及によって、私たちの社会と暮らしが大きく変貌したことを痛感させられたと思います。

このような障害の多発を受けて、総務省は9月に、「非常時における事業者間ローミング等に関する検討会」を発足させて対策に乗り出しており、これまでに30回以上に及ぶ検討会やワーキンググループが開催されているそうです。

「事業者間ローミング」というのは、ある通信事業者のネットワークに障害が発生した場合、別の通信事業者のネットワークに切り替えて、継続的に通信ができるようにする仕組みです。

これが実現できれば、利用者側は何もしなくても、通信事業者側で勝手にネットワークを切り替えてくれますので、一番良い対策となります。

しかし通信事業者のシステムは非常に複雑になっているため、このような「事業者間ローミング」による切り替えを実現するのは簡単でなく、時間と多額のコストが必要となり、3月30日に開かれた検討会では、2025年度末に実現することを目標とすることとなったようです。

しかしながら、それまでの間にまた障害が発生したらどうするのか?ということで、今回、一つの暫定解として、スマートフォン向けに限って、副回線方式による対策が発表されたものと位置づけられます。



事業者間ローミングを解説した筆者作成のイラスト

事業者間ローミングと言っても、様々なパターンがあり、上の絵はフルローミング方式と呼ばれるもののイメージを示しています。



副回線方式の仕組みと課題点

今回のサービス提供の仕組みは、KDDI/ソフトバンクが副回線用のSIMを発行し、スマートフォンにこれを設定しておくことによって、主回線の事業者に障害が発生した場合は、副回線側に切り替えて利用が継続できるというものです。



副回線方式を解説した筆者作成のイラスト

両社とも、月額基本料429円(税込)がかかり、実際に副回線を利用して通信や通話を行った際には、別途従量料金がかかります(国内通話料税込22円/30秒など)。

SIMとは、契約情報などが書き込まれたICチップのことで、最近では物理的なチップの他、eSIMと言ってスマートフォン端末に内蔵されていてオンラインで書き込む形式のものも増えています。

両社のプレスリリースを見ると若干の違いがあり、まず提供開始日がKDDIは3月29日から、ソフトバンクは4月12日からとなっています。

また利用できる端末について、ソフトバンクはeSIM対応機種としており、提供開始時点ではかなり限定されています(KDDIは物理SIMの機種にも対応)。

スマートフォンによっては「デュアルSIM」といって、SIMが2枚実装でき、切り替えて使える機種がありますが、今回のサービスでは両社とも特にデュアルSIM機に限定してはおらず、障害時にはSIMを挿し替えて(またはeSIMを切り替えて)副回線側を利用することができるようです。

ただし電話番号はSIMごとに決まっているため、副回線側に切り替えた場合に、主回線側の電話番号宛てにかかってきても着信できません。

必要な相手先には、あらかじめ「障害発生時にはこちらの番号にかけて下さい」と知らせておく必要があります。



鉄塔型の通信基地局の写真

通信障害時の自衛手段をどのように確保するか

業務利用などでいざというときのための保険と割り切る場合はともかくとして、月額基本料がかかる点や電話番号が異なる点など、私の予想では個人でこの副回線サービスを使う人は少ない気がします。

例えばKDDI系のオンライン専用格安サービスpovoの場合、基本料0円で、データ通信24時間330円(税込)といったトッピングメニューもあるので、これを定期的に(半年に1度以上)購入するようにして、主回線をドコモやソフトバンクにしておけば、この副回線サービスを使わずともほぼ同様の機能が実現できることになります。

そこまでせずとも、個人の場合であれば、現金で買い物したり、公衆電話を利用できるよう、とりあえず小銭は用意しておくとか、Wi-Fi通信が使える場所をあらかじめ見つけておく、で良いのかもしれません。

むしろ冒頭に述べたIoTなどは、この副回線サービスでは救えず、そのためにも本格的な事業者間ローミングによる対策が待たれるところです。

KDDIの場合、2013年にも4G LTEで大規模障害が発生しましたが、その後10年間は食い止めてきました。

私も通信事業者で働いてきた者として、各事業者が24時間365日安定的に稼働し続けるネットワークを維持するために、大変な努力と多額のコストを費やしていることは十分分かっています。

それでも絶対に障害を起こさないというのは不可能であり、頻繁に起こったのでは困りますが、ある頻度で発生することは避けられません。

今や私たちの暮らしに欠かせない通信サービスですが、障害はいつか必ず発生することを前提として、利用目的の重要度に応じて、適切な自衛手段を用意しておくことが大切ではないでしょうか。

それでは今回はこの辺で。

宜しくお願い致します。




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